わたしたちからみた栄光技研さん
常識を覆す「バネ専門企業」
工場見学前にざっと概要を説明していただきました。
栄光技研さんは門真市にある、ばね製造に特化した企業です。外観は工場というより洗練されたオフィスのようで、エントランスに一歩入った瞬間から驚かされます。
これは「製造業らしい製造業にしたくない」という社長のこだわりから生まれたもの。従来のイメージを超えて、ものづくりに新しい風を吹き込もうとする姿勢が強く伝わってきました。
名刺交換をしたのは、可愛らしく柔らかな雰囲気の休憩スペース。初めて訪れる人の緊張を自然と解きほぐすような空間で、ここにも「人を大切にする会社の文化」が感じられました。
さらに、パンフレットもシンプルで洗練されたデザイン。扱う製品がわかりやすく整理されており、初めて見る人でも同社の幅広さをすぐに理解できます。
「バネ」と聞くと多くの人はボールペンに使われるような一般的なコイルばねを思い浮かべるかもしれません。しかし栄光技研さんが手掛けるのはそれだけではなく、複雑でどうやって作られているのか想像もつかないような形状のばねも数多くありました。ここで初めて「バネ」という概念が大きく広がる感覚を得られたのです。
清潔さと安全性を追求した工場
機械の説明をしていただいています。
工場に足を踏み入れてまず驚いたのは、その清潔さです。一般的に製造現場は工具や機械で雑然とした印象がありますが、栄光技研さんの工場は柱を少なく設計することで、人や機械の動きがスムーズになり、すっきりとした空間が保たれていました。
さらに「5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」を徹底し、毎月の安全パトロールを実施。過去の不具合やクレームを社員全員で共有し、改善策を掲示板に明示する仕組みがありました。現場の空気からも「安全と信頼を守ること」を第一に考える姿勢が伝わってきます。
徹底した管理体制は単なるルールではなく、「社員を守りたい」という会社の強い意思そのもの。ものづくりに向き合う誠実さを目の当たりにした瞬間でした。
自動化と挑戦の最前線
製造現場の説明です。
工場見学では、ばねが生まれる工程を間近で見ることができました。線材をセットし、機械で自動的に巻かれる様子はシンプルに見えますが、その後に行う熱処理で金属内部の応力を取り除いてはじめて、一つのばねが完成します。
特に印象的だったのは、1人の社員の方が3〜4台、多いときには5台もの機械を同時に管理していたことです。自動化が進んでいるとはいえ、高い集中力と幅広いスキルが求められていました。
また、自動化では難しいとされる複雑なばね製造にも挑戦。実際に目の前で見ても「これは本当に機械で作れるのか」と思うような製品が次々と生み出されていました。
それは単なる挑戦ではなく、栄光技研さんが長年積み重ねてきた技術力と実績があるからこそ可能なこと。自動化と人の技術が融合する現場は、未来のものづくりの姿を映し出しているように感じました。
工場を見学してまず感じたのは、「挑戦を楽しんでいる会社だ」ということでした。一見すると同じように見えるバネでも、形状や強度は用途によってまったく異なり、その難題に真っ向から向き合う姿勢が現場の至るところに息づいています。
工場内は驚くほど整理整頓され、安全や効率のための工夫が細部まで徹底されていました。単に清潔さを保つだけでなく、「どうすればもっと良くなるか」を考え抜いた仕組みや配置に、探究心がにじみ出ています。
難しい製造を前にしても、諦めず工夫を重ねていく姿勢が会社全体の文化となっており、その空気感が我々にも伝わってくる工場でした。
社長インタビュー
当社はスプリング、つまりばねの製造・販売を軸にしている会社です。現場で必要になる周辺の部品については、一部は外部から仕入れてセットでお届けすることもありますが、事業の中心はあくまで自社製造のばねです。
用途や条件に応じて設計し、必要な強度や形状に仕上げて、お客さまのモノづくりの中で確実に機能するものをつくる。そこに力を注いでいます。
一般的なばねには、押して使う押しばね、引っぱって使う引きばね、ねじって使うねじりばね(トーションばね)があり、多くのばね屋さんがこの領域を手がけています。当社ももちろん作りますが、私たちの色がはっきり出るのは、複雑な曲げや難易度の高い設計が求められるばねです。
きっかけは、お客さまから「こんな複雑な形はできないか」と相談を受けたことでした。そこで逃げずに挑戦し続け、二十年ほど前からは自動車分野などで使われる複雑形状のばねにも対応できる体制を築いてきました。
「人が嫌がる仕事をやろう」「他社が断る困りごとを拾って、できないをできるに変えていこう」という先代からの考え方を、今も会社の芯として受け継いでいます。
一言で言うのは難しいのですが、前の問いにも通じるように、皆と同じことをやって楽をするのではなく、難しいものに向き合って価値を出す姿勢を大切にしています。
お客さまから「無理と言われた」と持ち込まれる案件に対しても、どうすれば実現に近づけられるかを粘り強く考える。困りごとを拾い、道筋をつける。その姿勢こそが当社らしさだと考えています。
当社は「休むときはしっかり休み、働くときは集中して働く」という方針です。十年以上前から土日休みを徹底しており、年間休日は125日。さらに年休は10日以上取る社員が多く、実質では135日程度休める計算になります。
休みを増やすだけでは会社は回りませんから、その分、生産性を上げる工夫を進め、誰かが休んでも止まらないよう多能工化を進めてきました。
コロナ禍を機に始業を一時間早められる運用も導入し、標準は八時半始業ですが七時半始業も可能にしました。通勤ラッシュや渋滞を避けられ、保育園の送迎や病院にも行きやすい。結果として若手ほど早く出社する傾向が定着しています。
会社は二〇時で施錠してそれ以降は働かないルールです。有給は午前・午後の半休で取得でき、子育てや介護にも柔軟に対応できるようにしています。休みの好みは人それぞれで、稼ぎたい人もいれば休みを重視する人もいる。その自由度を保ちながら、会社が回る仕組みを整えることを意識しています。
毎朝の朝礼を、業務の共有だけでなく「人となりを知る時間」にしています。仕事の予定を共有した後、その月のテーマに沿って全員がひと言ずつ話すのが決まりです。六月なら「梅雨の時期にしたいこと」、ほかにも「好きな花と花言葉」「今月食べたいもの」など、テーマは年初に決めた司会担当者が月ごとに設定します。形式的な朝礼にしない工夫です。
さらに、ストレングスファインダーを全員が受検し、上位資質の一覧を共有しています。分析や学習欲が高い人には数値や裏付けのある資料で、直感や大らかさが強い人には現物や具体例で伝えるなど、資質に合わせて説明の仕方を変えることで、伝達のすれ違いを減らしています。
現場では電話に出づらい場面も多いので、連絡は社内のSlackを活用し、既読やスタンプで「見た・理解した」を明確にする運用にして、言った言わないの齟齬を減らしています。
小さくても背伸びした目標をあえて任せ、できた瞬間の手応えを意図的につくっています。巻線しか経験のない社員に、ゼロから旋盤の立ち上げを任せた事例は象徴的で、力量を見極めたうえで託し、やり切ってもらうことで自己効力感が育ちます。
また、これまで強く推進してきたのは整理整頓などの5Sでしたが、二〇二三年末から二四年にかけて近隣で爆発や火災が相次いだことを受け、今年は安全にさらに舵を切りました。毎月の安全パトロールで危険箇所を洗い出して対策し、未使用のコンセントにはカバーをつける、充電の"つけっぱなし"を禁止するなど、具体的なルールを整備しています。
リチウムイオン電池は過充電で事故につながり得ますから、「製品を無条件に信用しない」ことを前提に、初歩的に見えることも徹底しています。
一番は、人としての底力——人間力を鍛えられることです。入社したら履歴書に書けることを増やそう、と最初に伝えています。フォークリフトの免許を取りたい、外部研修に行きたい——会社のためでもあり、自分のためでもある学びに背中を押します。
ここで身につけたことは、仮に将来どこへ行っても通用する。もちろん、今のままでいたいという人もいますから、無理やり同じ成長曲線を押しつけることはしません。ただ、挑戦したい人には、挑戦できる場と責任ある役割を用意する会社でありたいと思っています。
かつて社名は栄光スプリングで、本当にばね一筋でした。そこから部品点数を増やしていこうと方針を転じ、栄光技研へ。
今後は、ばね単体にとどまらず、ばねを組み込んだ一つの部品——いわゆるアセンブリとして完成度の高い製品を増やしたいと考えています。お客さまの手元ですぐ機能する形にまで仕上げて納める比率を上げ、必要とされる範囲を広げていきたい。その延長に、会社の姿があります。
これは"社長としての公式見解"というより、一人の年長者としての率直な助言です。
もし大きく稼ぎたいなら、まずは大企業に入るのも選択肢です。かつてのような終身雇用は崩れつつありますが、待遇が良いのは事実で、そこで最先端の仕組みや技術を吸収して、自分のスキルにしてしまう。そのうえで第二のキャリアを設計するのが賢い戦い方だと感じます。
もう一つ。どんな組織にも、反面教師にしたくなる人は必ずいます。ただ文句を言って終わりにせず、「自分はああならない」と学びに変えると、日々の出来事がすべて自分の糧になります。
結局は人間力です。お客さまと向き合い、仲間と仕事を進める以上、そこが仕事の土台になります。
いまの若い世代は本当に優秀で、真面目で、よく考えています。だからこそ、自分で考えて選び、責任を持ってやり切ってください。ここは、その選択と責任に見合うだけの手応えを用意できる会社だと思っています。
平岩社長のお話は、どの回答もまるで快刀乱麻を断つように明快で、そこに独自の哲学を強く感じました。「人が嫌がる難題に挑む」「他社が断る困りごとを拾う」という姿勢は、単なる経営方針ではなく、会社そのものの存在意義として語られており、強い信念がにじみ出ていました。
また、休み方や働き方への工夫、安全や教育への取り組みといった一見実務的なテーマにおいても、その根底には「社員一人ひとりが人として成長できる場でありたい」という哲学が流れています。難しい言葉を使うわけではなく、誰もが納得できるシンプルな言葉で語られるからこそ、その重みが一層心に残りました。
従業員インタビュー
私は製造部に所属しているので、基本的にはばねや製品を作っています。工場の中には24時間稼働している機械もあり、特に1階の工場で稼働している大きなばねを作る機械は止まることがありません。
そのため朝一番に必ず行うのは、現在加工している製品が良品かどうかを確認すること、そして機械が問題なく動いているかどうかを点検することです。
その後は止まっている機械を動かして生産を進めますが、機械が稼働する前には必ず検査を行います。さらに、2時間ごとに製品のチェックを行ったり、別の製品を作るための段取り替え、つまり機械のセット替えも頻繁に発生します。こうした工程を織り交ぜながら、1日の製造業務が進んでいきます。
工場を見ていただくと分かるように、現場では人はまばらで、どうしても機械と向き合う仕事が多いです。ただ、朝礼で情報を共有したり、掲示板を使って話し合ったりする機会もあり、必要なコミュニケーションはしっかり取れています。
正直に言えば「すごく明るくて楽しい雰囲気」と言うわけでもなく、かといって悪い雰囲気でもなく、適度にコミュニケーションを取りながら仕事をしているといった感じですね。
部署ごとに見れば、笑い声が聞こえたり、和気あいあいとした空気もあります。特に製造部は仲が良く、冗談を交わしながらやりやすい雰囲気で仕事をしています。ただ、部署間の交流についてはまだ課題もあるかなと感じています。
基本的には完全週休二日制で、土日休みです。製造部は納期の関係でどうしても休日出勤が発生することもありますが、それでも年に数回程度で、長時間働くというよりは「1〜2時間だけ出てきて機械を動かし、問題がないか確認して帰る」といった短時間勤務が多いです。
残業に関しても、水曜日は「ノー残業デー」と決められていて、基本的には業務が終わればそのまま帰る人がほとんどです。繁忙期には残業が増えることもありますが、絶対に残らないといけないという雰囲気はなく、それぞれが自分の担当業務を見ながら調整しています。
製造部でばねを作っているときにやりがいを感じることが多いです。特に複雑な形状のばねをゼロからプログラムして作り上げるのは難しい作業ですが、その分達成感があります。
また、完成した製品が実際に自動車の中に組み込まれているのを知ると、走っている車を見ただけで「あの中に自分が作ったばねがあるんだ」と思えて、とても誇らしい気持ちになります。
さらに、ばねは何万個と大量に生産するので、不良率ゼロで作り切れたときの達成感も大きいです。難しい形状に挑戦し、それを正しく作り切ること、そして不良を出さないよう工夫を重ねることが、自分にとっての大きなやりがいになっています。
私はもともとモノを作る作業が好きなので、そういった仕事ができること自体が楽しく、職場での時間を前向きに過ごすことができています。
この会社は、人づきあいが難しくなく、融通も結構利かせてくれるところが魅力だと思っています。確かに人がたくさんいる職場なので、合わない人も少しはいますが、全体的には居心地が良く、自分にとって働きやすい環境だと感じています。この居心地の良さが、長く続けられる理由の一つかもしれません。
一番印象に残っているのは、入社して間もない頃に初めて自分一人で担当した製品を最後まで作り切ったときのことです。最初は上司や先輩に付き添ってもらいながら教えてもらっていましたが、ある日「これを一人でやってみよう」と任されたことがありました。最初は不安でしたが、プログラムを組み、機械を動かし、検査も含めて自分で一通りの工程をやり遂げたときは、本当に大きな達成感がありました。
また、社内のイベントで部署を越えて一緒に取り組んだことも印象に残っています。普段は製造現場にこもっていることが多いので、他部署の人と協力して一つのことを成し遂げる機会は貴重で、そのときに「自分はこの会社の一員なんだ」と実感できました。
私が一番大切にしているのは「安全」と「品質」です。製造現場は少しの油断が事故につながる可能性がありますし、不良品を出せばお客様に迷惑をかけてしまいます。そのため、機械を扱うときには常に安全に気を配り、確認を怠らないようにしています。
また、自分一人で抱え込まず、困ったときには周りに相談することも大切にしています。現場では一人で考え込むよりも、周りに聞いたほうが早く解決できることが多いので、日頃から気軽に声を掛け合えるように心がけています。
そして、もう一つ大切にしているのは「楽しむこと」です。単純作業も多い仕事ですが、ただ黙々とこなすのではなく、自分なりに工夫したり、同僚と声を掛け合ったりすることで楽しく働けるようにしています。楽しい気持ちで取り組んでいると、自然といい仕事ができると思っています。
製造業というと「難しそう」「専門的な知識が必要」と思われがちですが、実際には入社してからしっかり学べる環境があります。私自身も入社時は何も分かりませんでしたが、先輩方が丁寧に教えてくれましたし、挑戦させてもらえる社風があるので成長するチャンスがたくさんあります。
また、工場の仕事というと「暗い」「しんどい」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、実際に働いてみるとそうではなく、仲間と協力しながら達成感を味わえる仕事です。自分が作った製品が世の中で使われていることを実感できるのは、とても誇らしいことだと思います。
ですから、少しでも「ものづくりに関わってみたい」と思う方は、ぜひ飛び込んでほしいです。挑戦する気持ちさえあれば、必ず成長できる会社だと思います。
お話を伺う中で強く感じたのは、「ものづくりを心から楽しんでいる」という雰囲気でした。毎日数多くのバネを扱う中で、検査や段取り替えを繰り返しながら、品質を守るために一切の妥協をしない姿勢を感じました。
特に印象的だったのは、複雑な形状のバネづくりに挑戦するときの話です。図面もなくゼロからプログラムを組み立て、試行錯誤を繰り返して形を作り上げる過程はまさに「職人技」。完成した製品が実際に自動車などに使われていることを実感した瞬間には、大きな達成感があるのだそうです。自分の仕事が社会と確かにつながっているという誇りがにじんでいました。