わたしたちからみたイーマキーナさん
駆除ではなく、予防。超音波で「来させない」
主力製品「Evasi(エバジー)」。動いていても、人にはほとんど音が聞こえません。それでも、ネズミにはクラクションのように響いているそうです。
神戸市灘区。イーマキーナ株式会社の主力製品は、一見しただけでは何をする機械なのか分かりません。ネズミなどの害獣を、捕まえるのでも殺すのでもなく、超音波で寄せつけないための装置です。取材のあいだもずっと動いていましたが、私たちにはほとんど音が聞こえませんでした。社長が設定を切り替えると、一瞬だけ高い音がかすかに届き、すぐにまた消える。それでもネズミにはしっかり届いているのだと言います。
ネズミ対策と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、粘着シートや殺鼠剤でしょう。ただ、どちらも捕まえたあとの後処理という、誰もやりたくない仕事が残ります。殺鼠剤にはもうひとつ厄介なところがあって、薬を口にした個体はその場では死なず、人目のつかない場所まで移動してから死ぬ。だから見えないところで腐敗が進み、原因の分からない匂いだけが残ります。おまけに近年は、子どもの誤飲などを避けるために強い薬が使えなくなり、食べても死なない個体が増えているそうです。捕る方向の対策そのものが、じわじわ効きにくくなっているというわけです。
そこでこの会社は、発想を逆にしました。出てから対処するのではなく、そもそも寄せつけない。ネズミにとって居心地が悪く、危険だと感じる場所をつくってしまえば、向こうが勝手に避けていきます。捕獲も後処理も要りません。実際、現場からは、それまで従業員に任せていた後処理の負担がなくなったという声が届いているといいます。粘着シートにかかった個体を片づける仕事を、若い働き手にさせずに済む。衛生面だけの話ではなく、そこで働く人の環境にもかかわる部分でした。
話を聞いて意外だったのは、ネズミ被害は田舎より都市部のほうが深刻だということです。餌が豊富で、さまざまな音や刺激を浴びてきた都市のネズミは、代を重ねて神経質になり、対策も難しくなっている。壁を垂直に登り、配管や吹き抜けを伝って高い階まで上がってくる種類もいるそうで、新しくてきれいなビルだから安心とは言えないのだとか。しかも飲食や食品を扱う店にとって、それが表沙汰になれば一気に信用を失いかねない。だからみな、口に出さずに困っている。表に出ないだけで、需要はあらゆる業種の足元に隠れていました。
音圧・周波数・パターン。「逃げる」を成り立たせる3つの条件
- 周波数
- 人の耳にはほとんど届かない超音波域を使用。動物種によって効く帯域が異なる
- 音圧
- 人体への影響を考え出力に余裕を残した設定で運用
- 音のパターン
- 膨大な組み合わせを用意。周波数を変えながらパターンも可変し、動物を慣れさせない
- 動作方式
- 基本は常時稼働。暗所で当てにならない動体検知に頼らずタイマー制御
- スピーカー
- 高音域に強い国産スピーカーを採用。屋外用は音を上から下へ反射させて前方に飛ばす構造
「超音波でネズミが逃げる」とうたう商品自体は、通販サイトを開けばいくらでも並んでいます。ただ社長は、そのなかには理屈を持たずに売られているものも多いと見ていました。周波数を何種類も入れました、パターンを何通り用意しました、音圧は何デシベルです。そんなふうに数字を並べても、それだけでは動物は逃げないのだそうです。
動物を本当に逃がすには、音圧と周波数と音のパターン、この3つが同時に揃っていなければならないと言います。野生の動物は、餌を探し、安全な場所で休み、また起きて餌を取る、その繰り返しの中で生きています。そのサイクルを妨げるだけの負荷が揃って、はじめて動物は危険を感じて離れていく。逆に、どれかひとつでも欠けていると、すぐに慣れてしまう。数パターン程度の単調な音では、ネズミは数日で平気になって戻ってくるそうです。
使っているのは、人の耳にはほとんど届かない超音波の領域です。人には聞こえなくても、動物はもっと高い音まで聞き取ります。音圧は、車のクラクションを間近で浴びるのに近い強さ。仕様上はさらに大きな音まで出せるものの、そこまで上げると人体への影響が懸念されるため、あえて抑えて運用しているといいます。追い払うためなら人を傷つけてもいい、とは考えていないわけです。
そして肝になるのが、音のパターンです。用意されている組み合わせは、ネズミが一生かけても同じ音の並びには二度と出会わないほどの数だといいます。周波数を変えながらパターンも絶えず動かし、機械の「クセ」を読ませない。同じ刺激を繰り返せばすぐ慣れられてしまうのなら、慣れる隙をつくらなければいい。その考えを、圧倒的なパターン数という物量で押し切っています。ここまで理屈を積んでいるからこそ、実用新案として権利化もできる。安く出回っている類似品とは、そもそも土台が違うようでした。
屋外用のスピーカー部。音を一度上から下へ反射させ、前方へ飛ばす。用途に合う機種を探し抜いた末の、少し変わった形です。
ネズミから鳥、そして人へ。ひとつの技術が広がっていく
この会社の製品は、ネズミだけにとどまりません。屋内向けの小型害獣対策から始まって、屋外では、農地や山ぎわを荒らす中型・大型の動物にも対応しています。屋外の装置は、電源を確保しにくい現場が多いことを見越して、ひとつのコンセントから複数台を数珠つなぎで動かせるように設計されている。しっかりした回路設計があってこそできることで、国内でも珍しい仕組みだそうです。事業者の現場はコンセントが少ない、というごく当たり前の観察が、そのまま製品の形になっていました。
屋外用のスピーカーひとつをとっても、詰め方が徹底しています。高い音をきれいに出せる機種を探して国内外のメーカーを片端から当たり、最後は音響を専門にする大学の先生にまで相談したそうです。用途を説明して「これが一番いい」と言われたものを、それ以来ずっと使っている。スピーカーが上に付く構造上、音をいったん上から下へ反射させて前に飛ばす。その少し変わった形も、必要に迫られて生まれたものでした。
鳥害対策になると、やり方がまた変わります。ここでは超音波ではなく光を使う。鳥は人間より多くの色を見分け、人には見えない波長まで捉えると言われます。その特性を逆手に取って、特定の色で強く光る素子の数や並べ方を変えながら試作を重ね、最終的に丸く並べた形に落ち着いたそうです。5年がかりだったといいます。展示会に出すと「鳥のほうが困っている」という相談が数十人から寄せられ、その声がそのまま次の開発テーマになっていく。現場の困りごとを拾っていくうちに、製品の幅が自然と広がっていったようでした。
鳥害対策の「EvasiCRO(エバジークロウ)」。超音波ではなく、鳥が嫌う光で近づけない。丸く並んだ素子は、試作を重ねてたどり着いた形だそうです。
そして、動物を数えるためのカウント技術を人に転用したのが、赤外線センサーの人数カウントシステムです。もともとは動物が何頭入ったかを検知して次の動作につなげる仕組みでしたが、あるとき「これを人間用に出してみては」という発想から製品になりました。強みは、カメラを一切使わないことです。カメラを置けない、あるいは置きたくない場所でも人数を数えられる。取得したデータは本体に記録され、表計算で扱える形で書き出せて、ネットワークにつなげば遠隔からも確認できます。カメラで一度システムを組むと、あとの拡張や変更のたびに費用がかさみますが、この装置は基本的に置くだけ。初期費用もランニングコストも抑えられる点が評価され、学校などの教育施設で採用が広がっているそうです。害獣も鳥も人も対象はばらばらですが、センサーで捉えて制御で解くという一本の技術が、横へ横へと伸びている印象を受けました。
人数カウントシステム「ENEX COUNTER」。カメラを使わない赤外線センサー式なので、大浴場やトイレなど、カメラを置けない場所にも設置できます。
心臓部は手放さない。国産部品と、長く使える設計
これだけ幅広い製品を、5名の会社がどうやって成り立たせているのか。聞いてみると、抱えるものと任せるものの線引きがはっきりしていました。製造そのものはファブレスで、外部の協力先に任せています。ただ、製品の心臓部にあたる回路設計と制御プログラムだけは手放さない。ここを握っているから、上場企業を含む取引先とも長く付き合っていける。社長が何度も口にしていた点です。
制御の中核には小型のコンピュータボードを据え、そこに自社で仕様を決めた拡張基板を組み合わせます。屋外の暑さに耐えさせたい、電源の取り方を変えたい。現場の条件に合わせて基板を差し替え、プログラムを載せて送り出す。汎用の部品を土台にしつつ、その上に自分たちの設計を積む、というやり方です。派手さはありませんが、少ない人数で多品種をさばくには、うまく考えられた組み立て方だと思いました。
もうひとつ、この会社を貫いているのが国産へのこだわりです。安く早くつくれるという海外からの誘いは今も絶えないそうですが、長いあいだ断り続けている。理由は精神論ではなく、あくまで実務的でした。安い部品は、いざまとまった台数をつくろうとすると必要な数が揃わなかったり、同じ型番なのに仕様が微妙に違ったりする。それでは同じ品質のものを安定して届けられません。だから、確かな流通網を持つ国内の部品商社から手に入るものだけを使う、と決めているそうです。
その先にあるのが、壊れないもの、長く使えるものをつくりたいという考えです。世の中には、長く使えることを前提にしていない製品も少なくありませんが、この会社が目指すのはその逆。基板は長期の使用に耐えることを前提に設計しているといいます。安く買えても数年で使えなくなるものと、値は張っても長く動き続けるもの。そのどちらを選ぶかを、部品一点から考えている会社でした。
屋内用から屋外用、鳥害対策、人数カウントまで。対象はばらばらでも、心臓部の回路と制御はすべて自社設計です。
害獣、鳥害、人数カウント。扱う対象はばらばらに見えますが、根っこにある問いは共通していました。「それ、人がやる必要ある?」「出てから対処するより、来させないほうがいいよね」。センサーで捉えて制御で解く、というやり方が、どの製品にも通っています。
そしてどの話にも、必ず「心臓部は自社」「部品は国産」という軸がありました。つくる工程は外に出しても、設計と部品選びだけは譲らない。5名の会社が幅広い現場に出入りできているのは、たぶんこの線引きをぶらさずにきたからだと思います。
社長インタビュー
大きく分けると、超音波を使った予防型の害獣対策機器、カラスやハトなどの鳥害対策機器、それから赤外線センサーを使った人数カウントのシステムです。加えて、回路設計や制御システムそのものを、お客様の「やりたいこと」に合わせてオーダーメイドで開発しています。最近はこの、基板をつくってほしいという相談がずいぶん増えました。
うちは、ITとものづくりの両方を経験してきた会社です。私はIT業界が長くて、17年ほどいました。そのあと製造業に何年か身を置いて、そこで製造業の遅れというものを、身をもって感じたんです。同じ「開発」でも、ITと製造業では言葉が全然違う。使う技術も、技術者のタイプも違う。だったらこの二つを組み合わせて、きちんとした商品を世に増やしていこう、と。それが会社を始めた動機であり、社名の由来にもつながっています。
害獣も鳥も人数カウントも、はたから見るとバラバラのことをやっているように映るかもしれません。でも根っこは同じで、「これ、人がやる必要ないよね」というものを機械に置き換えているだけなんです。だから私は、あえてDXとかAIという言葉は使いません。お客様も、大層な横文字より「それ自動でできたら便利やな」のほうがしっくりくる。じゃあやりましょう、こういう仕組みを組んで制御しましょう、と。そういう順番で仕事が生まれています。
好きというより、生き延びてきた、という感覚が近いかもしれません。私はパソコンがまだ一般的でなかった時代からIT業界にいて、その中で潰れていく会社も、大きくなっていく会社も、両方見てきました。営業もずっとやっていて、国内のIT事業者で行っていないところがないくらい回りました。そういう時代を生き抜いてきた人種なんです。
この害獣対策の機械も、実は前に勤めていた会社が手がけようとしていたものでした。ただ、そこでは売れなかった。まず私が売りに行って、そこから動き出したんです。その後その会社は方針を変え、最終的には買収されてなくなりました。行き場を失ったその技術と、一緒にやっていた仲間を引き取る形で、私が会社を立ち上げて、また一からつくり直した。それが今の形の始まりです。
だから、ゼロから趣味で始めた、という綺麗な話ではないんです。世の中に必要とされているのに、うまく形にならず消えかけていたものを、もう一度立て直した。そういう成り立ちの会社です。
私たちの考え方は、いつもそこなんです。来てから退治するのではなく、そもそも来させない。捕まえて始末するのは、誰にとっても嫌な仕事でしょう。動物にとっても、人にとっても、来させないほうが平和なんです。
分かりやすく言うと、万引きと同じです。万引きされてから犯人を捕まえても、もう遅い。それより、万引きされない売り場をどうつくるか、でしょう。害獣も同じで、出てから駆除するより、出させないほうが根本的なんです。動物には決まった通り道があって、そこからしか入ってきません。だからその手前で「ここは危ない」と思わせれば、無理に追い払わなくても、向こうが避けていく。理にかなっているんですよ。
もうひとつ根っこにあるのは、「人がやらなくていい仕事は機械に」という考えです。以前、ある店の入り口で、スタッフの方がひたすら入店客の数を数えているのを見たことがあります。この人、こんな単純作業をずっとやらされて気の毒だな、と。数を数えるだけなら機械でいい。人は、人にしかできない仕事をすればいい。人数カウントのシステムは、その思いから生まれました。害獣も人数も、発想の出どころは全部そこなんです。
「これ、人がやる必要ある?」。話はあちこちに広がりながら、いつもその問いに戻ってきました。
とことん詰めます。たとえば新しいものをつくるとき、私は、できあがるまでの過程がなんとなく頭の中で見えるんです。この機構なら、こういうセンサーで、こう制御して、と。そこがうちの特殊なところかもしれません。だから、世に出回っている機械を見ても「これはこういう仕組みだな」と見当がつく。逆に「これはもう他所が十分やっているな」と思えば、手を出しません。勝てそうなら、やる。まだ伸ばせる余地がある、と思えるものだけをやるんです。
心臓部は、絶対に自分たちで握ります。製造そのものは外に頼むファブレスですが、頭脳にあたる回路と制御プログラムだけは手放しません。ここが一番の肝で、ここさえ握っていれば、こんな小さな会社でも上場企業と何年も対等に付き合っていける。実際、行く先はてんでバラバラです。今日は畜産の現場、次の日はまったく畑違いの施設、という具合に。心臓部を自前で持っているから、それだけ幅広い相手の「困った」に応えられるんだと思います。
技術者が減っているのは心配しています。特に回路を設計できる人が少ない。若い人がやりたがらないんです。AIがあるから要らない、という声もありますが、私は、最初の一番肝心な設計は人間がやらないと追いつかないと思っています。人が引いた設計をAIが手直しするならまだしも、ゼロから生み出すところは、まだ人の仕事です。
「壊れないもの、長く使えるもの」。これに尽きます。世の中には、そもそも長く使うことを前提にしていない製品も少なくありません。うちはその逆でありたい。だから基板は、長く持つ前提で設計しています。安く買えても数年で使えなくなるものと、長く働き続けるもの。私たちは後者をつくる会社でありたいんです。
そのためにも、国産にこだわっています。海外から「もっと安くつくれる」という売り込みが今も月に何件も来ますが、この何年か、すべてお断りしています。これは感情論ではなくて、実務の話なんです。安い部品は、いざ数百台まとめてつくろうとすると、必要な数が揃わなかったり、同じ型番のはずが仕様が微妙に違ったりする。それでは、同じ品質のものを安定して届けられません。だから、しっかりした流通網を持つ国内の部品商社から手に入るものだけを使う、と決めています。
安いから動いている、それでいいじゃないか—そういう考え方だけではまずい、というのが私の言いたいことです。この先、海外に頼りきりの会社は本当に厳しくなると思っています。だからこそ、日本の製造業がもう一度力をつけて、できること・できないことをはっきりさせたうえで、できる会社同士が手を組んで国産を増やしていく。そうしないと、いつか日本からものがなくなってしまう。そのくらいの危機感でやっています。
今は5名です。年齢は30代後半から40代が中心ですね。始業は9時、終業は18時、休憩は1時間。創業当初から完全週休2日で、土日祝はきちんと休みます。祝日も休んでしまう。息抜きは必要ですから、休みの日は家族と過ごすなり、自由にやってもらいます。
残業は、ある時期はありますが、ない時期はまったくありません。多い月でも20時間はいかないくらいで、少ない月は10時間台だと思います。とはいえ人数が少ないので、どうしても負荷が一人に寄りがちな場面は出てきます。そういうときは、みんなでフォローに回る。それを一番心がけています。
飲み会で仕事を取る、みたいな文化は、私たちの世代はむしろ苦手なんです。だから飲みありきではなく、何かの節目に「ご飯でも食べに行こか」という程度。その代わり、言いたいことは全部言い合います。私は一応社長ですが、「これはいい」「これはあかん」と、みんな遠慮なく言う。発言しやすい空気をつくっておかないと、そもそもアイデアが出てこないんですよ。最終的に決めるのは私ですが、そこに至るまではフラットでいたいんです。
正直に言うと、これという研修制度があるわけではありません。うちはみんな独学です。自分でいかに情報を取りにいくか。人・物・金・情報という、よく言うビジネスの要素を、それぞれが自分の足でつかみにいくタイプの集まりなんです。
結局、好きこそものの上手なれで、うちの人間はこの仕事も、機械そのものも好きなんですよ。休みの日も、それぞれが好きなものをいじって過ごしているようなところがあります。技術者の中には、自分の乗り物を自分で手を入れて、細かい部品まで自作してしまう者もいます。そういう「好き」がベースにあるから、放っておいても伸びていく。無理にやらせるより、面白がれる環境を保つことのほうが、うちには合っているんだと思います。
私自身の話をすると、数年前から、子どもたちにあるスポーツを教えるコーチを引き受けています。地域で、続けたくても続ける場所がなくなってしまう子たちがいると知って、それは放っておけないな、と。自分の時間はほとんどなくなりましたが、こういうのも巡り巡って何かにつながると思っています。人に何かを手渡すのは、仕事も子どもも、案外同じなのかもしれません。
うちの人間は、みんな楽しそうっちゃ楽しそうなんですよ。「こういうものをつくりたい」という声が上がると、すぐに「ああすればできる」「こうすればいい」と、みんなで方法を考え始める。そのやり取り自体が面白いんだと思います。
私がいつも言うのは、できない理由を並べるな、できる方法を考えてくれということです。「できない」と判断した瞬間に、思考はそこで止まってしまう。でも「どうやったらできるか」を考え始めると、そこからまだいくらでも頭を使えるんです。だから私は、いつも「どうやったらできるんやろう」と考えている。この習慣が、結果的にうちの一番の強みになっている気がします。
そしてもうひとつ。こんな小さな会社でも、持っている製品とやり方次第で、名だたる大企業に堂々と出入りできる。今日はこの業界、次の日はまるで違う業界、と行き先がバラバラで、自分でも「えっ、こんなところに」と驚く瞬間があります。会社の大きさではなく、何を持っているか。それを日々実感できるのが、ここで働く面白さだと思います。
大きなことを言えば、いずれ上場したいという思いはあります。目標としては10年以内。ただ、そのころ世の中や時代背景がどうなっているかは、正直まったく読めません。今回の国際情勢の動きだって、誰も予想していなかったでしょう。だから断言はできませんが、目標として掲げてはいます。
製品面では、再生可能エネルギーまわりに力を入れています。発電設備から出てくる情報を、遠隔でリアルタイムに把握できるようにする仕組みを開発中です。発電量を可視化し、制御につなげる。これができれば、多くの発電事業者さんに使ってもらえるはずだと考えています。今はまだ、静かに仕込んでいる段階です。
逆に、すでに他所が十分やっていて勝ち目のないものには手を出しません。世の中には、本来なら国産でやるべきなのに、いつのまにか海外製が当たり前になってしまった分野がたくさんあります。ただ、その流れも変わりつつあると感じています。海外に頼りきれなくなる局面が、この一、二年で確実に来る。そのとき、国産にこだわって地道にやってきた私たちのような会社に、出番が回ってくると思っているんです。
まずは、自分のやりたいことを口に出したほうがいい、と思います。私たちの世代は、どちらかというと無理を重ねる働き方の中で生きてきましたが、それでは人は続かないと、身をもって分かっています。今の時代にも合いません。だから、いかにクリーンな会社、体育会的な無理を強いない会社を選ぶか。そこはこだわっていいと思います。
そして、大手だけが正解ではありません。うちのような小さな会社でも、持っている技術ややり方によっては、名だたる企業と対等に仕事ができます。会社の看板の大きさだけで進路を決めてしまうのは、もったいない。中身を見てほしいんです。
やりたいことが分からない、という人が多いのもよく分かります。だからこそ、まずはジャンルを問わず、いろんなことに興味を持ってほしい。「世の中にこういうものがあったらいいのに」と考えられるかどうかで、見える景色は変わります。時間のある学生のうちに、たくさんのものに触れて、興味の入り口を一つでも多く増やしておいてください。それが、いつか自分の仕事につながっていくはずです。
質問事項からは、何度も気持ちよく脱線しました。海外製の家電、大手メーカーの内情、外食チェーンの裏側、地方の農業。話題は縦横に広がっていくのに、そのどれもが具体的で、実際に現場を見てきた人の言葉でした。
「できないことを並べるな、できる方法を考えろ」。素人ならそこで手が止まってしまう場面でも、この方は必ずその先を考えていました。つくる工程は外に出しても、設計と部品選びは自分たちで握る。そうやって理屈を積み上げてきたからこそ、小さな会社でも大企業と対等に仕事ができるのだと思います。その理由が、この一言に表れている気がしました。