わたしたちからみた三和歯車さん
噛み合う、その一瞬に未来が回る

手にとって説明いただいています。
三和歯車さんの工場は門真市と大阪市内にあります。今回案内していただいたのは大阪市内の工場でした。初めは少し緊張していましたが、仲さんが温かく迎えてくださり、その雰囲気のおかげで緊張も自然とほぐれていきました。
その名の通り「歯車」をつくっている会社ですが、実際にはその種類は多岐にわたります。ここでは「スプロケット」という部品も数多く製造されています。スプロケットはチェーンをかけて動力を伝える歯車で、自転車の後輪やバイクの駆動部を思い浮かべるとイメージしやすいです。
産業機械や食品機械などでも幅広く使われており、私たちの日常生活を支える大切な部品です。さらにラックギア、プーリー、特殊形状のギアなど、多彩な製品をつくり分けています。
特にステンレス製の歯車は食品機械や医療分野で求められる「衛生性」「耐食性」に対応するため欠かせない存在。三和歯車さんが得意とする領域です。
また印象的だったのは、「高精度」だけでなく「適度な精度」のものづくりにも応えていること。必要以上に高い精度を追求してコストが上がってしまうのではなく、「用途にとって必要十分な精度」を柔軟に提供できる。そのバランス感覚こそが、お客様からの信頼を集める理由だと感じました。
金属と油と職人技

黄金の油が滝のように流れています。
工場に入ると、ずらりと並ぶ機械群に圧倒されます。1階には大型機械が並び、金属の塊が少しずつ削られ歯車の形になっていく様子を目の当たりにできました。
切削油が黄金の滝のように流れる光景は思わず見入ってしまうほど。機械がプログラム通りに動いていても、最終的な高精度は職人の感覚に依存している部分が多いことを知り、「これこそ人の技術だ」と実感しました。
1/100mm単位のズレを調整する作業は容易ではなく、長年の経験と研鑽の積み重ねが欠かせません。さらにバリ取りや検査など、人の手でしかできない工程も数多く残されており、最先端の自動化と職人技が共存する場面にものづくりの奥深さを感じました。
三和歯車さんの強みの一つは、多様な加工を社内で一貫して行えること。材料切断、旋盤、歯切、マシニング、ワイヤーカット、溶接など幅広い工程を自社で完結できるため、品質と納期を両立できます。さらに材料の在庫も備えており、急な依頼にも柔軟に対応できる体制が整っています。
1/100mmに宿る誇り

職人技によるバリ取りです。
歯車にとって命ともいえるのは「かみ合わせ」です。1/100mmのズレでも不具合につながり、時には人命を左右することさえあります。だからこそ「まあこれでいいだろう」という妥協は決して許されません。
安価な海外製品も市場に出回っていますが、三和歯車さんはあえて「高精度のステンレス製歯車」という難易度の高い領域に挑み続けています。それは単なる選択ではなく、会社全体の誇りであり、「自分たちの技術で社会を支えるんだ」という強い意思の表れに感じました。
見学中、従業員の方々は忙しい中でも丁寧に説明してくださり、作業の合間に笑顔が見られる場面もありました。普段から自然にコミュニケーションを取り合っていることが、現場の信頼関係や居心地の良さを生んでいるのだと思います。
さらに、工場外の環境も整っていました。清潔に保たれた食堂や、見晴らしの良い屋上など、社員が日々の仕事に誇りを持ち、気持ちよく働ける工夫が施されていました。
また三和歯車さんは、地域に開かれた取り組みにも積極的です。オープンファクトリー「FactorISM」への参加や地域イベントでの出展を通じて、子どもや学生にものづくりの魅力を伝えています。
仲さんが工場を案内してくださる中で感じたのは、この会社やものづくりに対する深い愛情と誇りでした。機械や工程を説明する言葉の端々から、「本当にこの仕事が好きで、この技術に自信を持っているのだ」と強く伝わってきます。
自慢の技術と自慢の社員、そして自慢の会社。そのすべてに対して真剣に向き合う姿勢が印象的で、こうした方が愛情をもって会社を導いているからこそ、この工場全体に活気と温かさがあふれているのだと実感しました。
次代の社長へインタビュー

当社は、大きく二つの販売形態を持っています。一つは、カタログ品のように寸法が決まった製品を在庫しながら販売する方法。もう一つは、お客様からのオーダーに基づいて加工し、製品を仕上げて販売する方法です。
特徴としては、さまざまな種類の歯や刃の形に対応できる点が挙げられます。金属の塊を図面通りに削り、部品である歯車を完成させ、協力工場の力も借りながら部品を揃えます。ただし「完成させたら終わり」ではありません。お客様に届け、対価をいただくところまでが私たちの仕事です。
三つの大きな特徴があります。一つは、ステンレス製の歯車・スプロケットを長年扱っていること。食品機械などで必須とされる分野で実績を積んでおり、絶対に需要がなくならない領域に強みを持っています。
二つ目は、社内で一貫製造ができる体制です。門真工場に材料を在庫しており、緊急時には翌朝には次工程に回せるスピード対応が可能です。
三つ目は、他社がやりたがらない領域を担っていることです。また、必ずしも「高精度=顧客満足」ではありません。「そこまでの精度は不要」という顧客に対して、適正な価格で対応できるのも当社の強みです。
当社の理念は「三和歯車に関わるすべての人たちが幸せになるものづくり」です。製造現場での「誠実さ」はとても大切です。「これくらいでいいだろう」とごまかして出荷すれば、すべての関係者を不幸にします。だからこそ、常に正直でいることを徹底しています。
社員にも「まず三和歯車が幸せであることが、全員の幸せにつながる」と伝えています。
基本、カレンダーの休みの日は必ず休みにすることを徹底しています。残業はできる限り減らしており、無理な残業はさせません。ただし「残業したい」という社員もいるので、個々に合わせて柔軟に対応しています。
また「パパ休暇(育児休暇)」を取得した社員もおり、その際には他工場から人員を融通するなど、チームで支え合って業務が滞らない体制を整えています。
当社は20人規模の中小企業なので、社長を含め経営層と現場が直接コミュニケーションを取れるのが特徴です。また、社員旅行やバーベキューなどの社内イベントも行っています。強制参加ではありませんが、20人規模だからこそ「行きたいね」となる人が多いです。
ファクトリズムのようなオープンファクトリーや地域でのワークショップに参加すると、外部の人から「すごい」と言われることがあります。1/100ミリ単位の精度で部品を仕上げる作業は社内では当たり前ですが、外の人から驚かれると、やはり嬉しくなります。
今後さらに取り組んでいきたいのは「自分たちが作った部品が実際にどう使われているのか」を従業員に見せることです。
やはり「ものづくり」に携われることです。材料の塊から歯車が形になっていく過程に関われるのは、大きなやりがいがあります。コミュニケーションよりもものづくりが好き、そんな人にとっては非常に魅力的な職場だと思います。
方向性としては「今のポジションを少しずつ広げる」ということを意識しています。当社は「必要なときに必要なものを届ける」ポジションを担っています。その強みを維持しながら、着実に成長し、地域や業界で必要とされる存在であり続けることを目指しています。
まず大切なのは「自己選択・自己責任」です。自分で見て、自分で決めること。就職活動ではできるだけ多くの会社を訪ね、実際に見て感じてください。
大企業には大企業の良さがありますが、中小企業にも転勤がなく地域に根付ける、組織を自分たちでつくれるといった魅力があります。人生40年・50年のスパンで見たときに、自分にとってどんな働き方が幸せなのかを考え、納得のいく選択をしてほしいと思います。
インタビューの最中、仲さんは専門用語をほとんど使わず、仮に使ったとしても必ず噛み砕いてわかりやすく説明してくださいました。それは専門職としてのプロ意識から生まれる説明力なのかもしれませんが、同時に「相手にきちんと伝えたい」という優しさがにじみ出ていて、とても温かい方だと感じました。
そうした人柄があるからこそ、現場にも自然と同じような穏やかで信頼感のある空気が流れているのだと思います。